「日本の水道水はそのまま飲める」。この言葉は半分正しくて、半分だけ足りない。確かに水道法では52項目もの水質基準が定められ、蛇口から出る水は世界でもトップクラスの安全性を誇る。水道普及率も98.2%に達している。だが同じ「安全」でも、カルキ臭が気になる、もっと徹底的に不純物を除きたい、あるいは健康のためにアルカリ性の水を飲みたい——そう考える人が日本には少なくない。だからこそ、浄水器・整水器の市場は家庭普及率83.5%という、世界でもまれな高さにまで育っている。
この市場で繰り返し聞かれるのが、「アルカリイオン整水器とRO浄水器、結局どっちがいいのか」という問いだ。結論を先に言えば、この二つは「何をする機械か」が根本から違う。水に何を求めるかが決まれば、答えはおのずと出る。
二つの機器はそもそも別物である
整水器と浄水器は、店頭では同じ家電コーナーに並ぶことが多いが、法的な位置づけからして違う。アルカリイオン整水器は、家庭用の管理医療機器として認可されている。1966年に旧厚生省から家庭用医療機器として承認を受けて以来、医薬品医療機器等法(旧薬事法)のもとで「胃腸症状の改善」という効果が認められた、飲用水生成器としては唯一の機器だ。
一方、RO浄水器は医療機器ではない。逆浸透膜という物理的なろ過膜を使って、水に溶けている不純物をできる限り取り除く「浄水装置」である。健康効果をうたうものではなく、純粋に「水をきれいにする」ための機械だ。
この違いを押さえると、以降の比較がすっきりする。整水器は「水に機能を足す」機械であり、RO浄水器は「水から不要物を引く」機械だ。目的が違うから、単純に優劣をつけることはできない。
アルカリイオン整水器の仕組み——浄水してから電気分解する
アルカリイオン整水器の内部では、大きく二つの工程が動いている。まず、活性炭を中心としたカートリッジで水道水の残留塩素や濁り、トリハロメタンといった不純物を除去する。この段階までは、普通の浄水器と仕事は同じだ。
次の工程がこの機器の本質で、ろ過した水を電解槽に通して電気分解する。すると陰極側に水酸化物イオンと水素が集まり、pH9〜10のアルカリイオン水(還元水素水とも呼ばれる)が生まれる。同時に陽極側には弱酸性の水ができ、これは洗顔などに使える。
電気分解を経た水には、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムといったミネラルが原水より約5〜20%多く含まれる。水素も豊富に含まれ、これが胃腸症状の改善にアプローチするとされる。製品規格はJIS T 2004で定められており、家庭用医療機器としての安定した品質が求められる。飲み始めはpH8.5程度からコップ1〜2杯ずつ始め、慣れたらpHを上げていくのが一般的な使い方だ。

RO浄水器の仕組み——0.0001μmの膜で物理的に分離する
RO浄水器の心臓部は、逆浸透膜(RO膜)だ。孔径はわずか0.0001μm。これは水分子より一回り大きな穴で、水分子だけを通し、それより大きな物質をことごとくせき止める。重金属、細菌、ウイルス、そして近年基準が厳格化されたPFAS(有機フッ素化合物)も、この膜でほぼ除去できる。
仕組みは純粋に物理的だ。電気分解のような化学反応を起こさず、圧力をかけて水を膜に押し込む。膜を通り抜けた水が「浄水」、通れなかった濃縮水が「排水」として分かれる。このため、水に何かを足すのではなく、水から引くことに徹している。
日本の水道水は軟水で、もともと溶け込んでいるミネラルが少ない。そのため国内市場では従来、ROより整水器や中空糸膜タイプの浄水器が主流だった。だがPFASが2026年4月から水質基準に格上げされるなど水質への関心が高まるにつれ、徹底した除去を求める層の間でROが選ばれ始めている。

日本の水質事情——なぜ今この選択が問われるのか
「水道水は安全」という前提は揺るがない。だが、安全と快適は別の話だ。実際に日本の水道水を取り巻く課題を並べてみると、いくつかのポイントが浮かび上がる。
まず残留塩素の臭い、いわゆるカルキ臭だ。水道法では給水栓での遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つことが義務づけられており、これが消毒のために必要な一方、大都市の住民が水道水を直接飲まない主な理由になっている。次にトリハロメタン。塩素が水中の有機物と反応して生じる消毒副生成物で、総トリハロメタンとして0.1mg/L以下の基準が定められている。さらに近年注目されるのがPFAS(有機フッ素化合物)だ。PFOSとPFOAの合計で50ng/L以下という値が、2026年4月からそれまでの暫定目標値ではなく正式な水質基準に格上げされた。沖縄や多摩地域では過去に基準超過が検出された例もある。
設備面では、国内の水道管の35%以上が敷設から30年を超えているという事情がある。マンションの貯水槽も、清掃が行き届かなければ濁りや細菌のリスクにつながる。こうした課題を前にすると、「整水器の浄水機能で足りるのか、それともROの徹底除去が必要なのか」という選択が、いま改めて問われている。
除去できる物質を比べると差が見えてくる
整水器とRO浄水器は、除去できる物質の幅が違う。整水器の浄水機能は、家庭用浄水器の試験方法を定めたJIS S 3201に沿って評価される。基本の除去対象は、遊離残留塩素、濁り、総トリハロメタンなど17項目。業界団体の日本浄水器協会(JWPA)の自主規格では、これに鉄やアルミニウム、PFOS・PFOAが加わる。
対してRO浄水器は、水に溶けている物質をほぼ丸ごと除去する。逆浸透膜はナトリウムやカルシウムといったイオンまで通さないため、重金属はもちろん、硝酸態窒素、PFAS、細菌、ウイルスまで幅広く対象になる。
| 比較項目 | アルカリイオン整水器 | RO浄水器 |
|---|---|---|
| 法的な位置づけ | 家庭用管理医療機器 | 浄水装置(医療機器ではない) |
| 仕組み | 浄水してから電気分解 | 逆浸透膜による物理ろ過 |
| 主な生成水 | アルカリイオン水(pH9〜10) | 純水に近い浄水 |
| 除去対象 | 残留塩素・濁り・トリハロメタン等17項目+α | 溶解物質をほぼ全て |
| ミネラル | 残す(5〜20%増加) | ほぼ除去 |
ここに、この二台の本質的な違いがある。整水器は「水道水の気になる点を減らしつつ、ミネラルは残す」。RO浄水器は「水に溶けているものを極限まで除く」。ミネラルを残したいか、それとも純度を最優先するか。これが最初の分岐点になる。整水器と浄水器全般の違いについては、整水器と浄水器の違いを解説した記事でも詳しく触れている。
メンテナンスと使い方の違い
購入後に効いてくるのがカートリッジの交換だ。整水器はカートリッジの寿命が比較的長く、2年タイプの製品も多い。RO浄水器は、前段のPPフィルターや活性炭、そしてRO膜そのものと、複数の部材を段階的に交換する。膜の寿命は原水の水質に左右されるが、前段のフィルターをきちんと交換していれば、膜自体は数年持つ。
ROには排水が発生するという特性もある。膜を通れなかった水が排水として流れるため、整水器より水道の使用量は増える。ただしこれは無駄ではなく、膜を清潔に保つための仕組みであり、製品によっては排水を再利用する設計もある。RO膜の構造と寿命についてはRO膜の仕組みと寿命をまとめた記事、交換のタイミングはフィルター交換時期の見分け方を解説した記事が参考になる。
水に何を求めるかで選ぶ
ここまでの話を踏まえると、選び方は自然と定まる。胃腸の調子を整えたい、水素やアルカリ性の水に健康面の期待を持っている、という人には整水器が合う。薬を飲むときや乳児のミルクには浄水を使う、といった使い分けも、整水器なら一台でこなせる。
一方、残留塩素の臭いやトリハロメタン、PFASなど、とにかく「水に溶けているものをできるだけ除きたい」という人にはRO浄水器が合理的だ。特に老朽化した配管が気になる地域や、より徹底した純度を求める家庭では、ROの物理的な除去力はわかりやすい安心感につながる。家庭用浄水器の種類と選び方の全体像は、家庭用浄水器の選び方ガイドで整理している。
ROメーカーとしてのONEMIの考え方
当社ONEMIは、広東省東莞に拠点を置く浄水器メーカーとして、逆浸透膜を使ったRO浄水器をつくり続けてきた。整水器が「機能を足す」アプローチなら、当社のRO浄水器は「純度を高める」アプローチだ。
RO膜の孔径0.0001μmという数字は、当社の製品の基準でもある。前段のPP綿・活性炭フィルターと組み合わせることで膜を保護し、除去性能を長く保つ設計にしている。品質面ではCE、UL、FCC、ROHSの認証を取得しており、NSFについてはフィルターカートリッジのみの対応となる。
水に何を求めるかは人それぞれだ。整水器を選ぶ人も、ROを選ぶ人も、どちらの判断も正しい。ただ、もし「とにかく徹底的にきれいな水が欲しい」というなら、ROの物理的な除去力は検討に値する選択肢になる。
